(私)「何か質問ある人はいますか」
(生徒)「抜重すると不安定になり、恐ろしくてたまりません。」
(私)「どんな感じで抜重しますか?」
(生徒)「抜重では体の力を抜いています。」
(私)「この馬鹿たれが〜〜〜!それは抜重ではない、脱力だ!」
ほんとうにあった恐ろしい話です。
まずは抜重の定義から。
日本スキー教程:雪面を圧している力を軽減すること。
SIAオフィシャルメソッド:(荷重と抜重)スキーに加わる荷重量を増減させること。
新オーストリアスキー教程(一部抜粋):競技選手や上級者がターンの際にスキーをより良く滑らせようとするときには、まずスキーを雪面から離さず、またエッジをできるだけ立てずに、なめらかに、回し始めることだ。そしてターン後半でスキーに強く荷重する。そのための“準備動作”として、まわし始めで抜重が不可欠となる。
パラレルターンにおいて、切り換え時に必要な抜重動作は、“伸身抜重(ストレッチング)”と屈身抜重(ベンディング)“に分けることができます。しかし、常に一つの方法に限定するのではなく適材適所で双方を使い分けるようにしたいものです。
一般的に低速度ではストレッチング、速度が速くなるにしたがってベンディングへと動作は変わっていきます。
近年、カービングターンと称して低〜中速度で滑っているにも拘らずベンディングで切り換えるスキーヤーが多く見られます。このような間違いは指導者にも原因があるような気がします。
又、コブ斜面を滑る際にも、低速度であればストレッチングの方がうまく滑れます。コブ=ベンディングという考えも改めたいものです。一流レーサーやモーグル選手がベンディングで切り換える時のスピードをもう一度よく観察してください。
「抜重とはなんですか?」と聞かれたら私は次のように答えます。
「抜重とはスキー板にためた圧を解放することです。」
一流スキーヤーは抜重するために、必要な圧をターン後半までしっかり維持してきます。そして、たまった圧をタイミング良く解放します。そうすることに(圧を上手に解放)より、スキーの抜け(走り)を出しています。
又、低速度でも少ない圧を利用して過重・抜重を上手におこなっています。
近年では、スキーの構造(性能の向上)が抜重にも大きな影響を与えています。特に、ワールドクラスの競技スキーヤーでは柔軟性に富んだ板を雪面から離さずまわせるので、昔ほどはっきりと抜重する必要性がなくなっています。しかし、抜重自体はなくなっていません。勘違いしないようにしましょう。
ターン後半、必要な圧をスキー板にためる「荷重」、そして圧を解放する「抜重」がスムーズな切り換えと、スキーの走りを生み出します。荷重(圧を受ける)と抜重(圧の解放)この当たりを大切にしたいものです。
今日の結論。人生にも同じような事が言えます。頑張る時もあればリラックスする時も必要。一般的に人生において抜重の時間が長すぎる人間を「遊び人」と呼んでいるような気がします。荷重あっての抜重です。まずは労働しましょう。但し、スキー(荷重・抜重)が上手ければ人生の達人になれるかどうかは保証できません。(山藤)
写真
写真は30cmほど新雪が積った荒踏み状態のゲレンデを滑るNさんです。圧を解放する瞬間がタイミングよく撮れました。このようなゲレンデではソフトタッチなエッジングが特に大切です。良い滑りです。